天然執事はいかがです?
第7章 波乱の休日
西商を離れてから10分程度車に揺られ、菜月は眠りに落ちた。
「菜月寝ちゃった」
舞弥は笑いながら、無防備な菜月の左頬を突っついた。
「お嬢様は寝てしまわれたのですか?」
「うん。それもぐっすり」
舞弥はぐっすりを強調させ、笑いながら言った。
……丁度良い機会かな。
「…ねぇアルトさん。
あなたに初めて会った私が言うのも何だけど……
菜月のことどう思ってる?」
「………」
アルトは口を閉ざし、考えた。
アルトが考えていた時間は実際一分か二分なのだろうが、舞弥には長く感じられた。
「……無茶をする方ではありますが、優しい方だと思っております」
「……それは執事として?」
「はい」
「なら、一人の男としては?」
舞弥はそれが訊きたかった。
菜月がどんなに彼を思っても、また彼女を泣かせるのなら今度こそ舞弥は許せなかった。
「……それは、お答えでき兼ねます」
…つまり答えられないってか。
「なぜ?」
舞弥はしつこく訊く。
「私は執事です。ですから私情は…」
「持ち込まないと?」
舞弥はアルトの言葉を遮った。
一瞬後ろからハンドルを握りしめるアルトの手が、強張ったように舞弥には見えた。