
好きにさせてはいけない
第2章 慣れてきた頃
とある日、わたしは店長のみるくさんに呼び出された。
「ゆいなちゃん、休みの日に悪いね。
これ、契約書まだ書いてなかったでしょ?
分かってると思うけど、注意事項と一緒に確認してサインしてね。」
「わかりました」
注意事項は研修で話されたから知っている。
1つ目、お客さんに夢を壊すようなことを言ってはいけないということ。
「ゆいな」である以上、本名も年齢もどこに住んでいるのかも、普段何をしているのかも言ってはいけない。
まあ、言うつもりもない。
2つ目、お客さんと連絡先を交換してはいけないということ。
お客さんと個々に連絡を取ることは禁じられているし、お店の外で会うことも禁止されている。
まあ、連絡先を言う気もない。
3つ目、彼氏の存在を表に出してはいけないということ。
これも、夢を壊すことにつながる。
実はわたしには彼氏がいる。
彼氏にメイドカフェで働いていることは言っていない。
