飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
まあいっか、とそのまま寄り掛かる
「ねぇ、にの」
さっきの続き!と雅紀が俺を呼んだ
「なに」
「お金じゃないなら何なの」
" 嫌な予感しかしないんだけど " って眉を潜めてる
失礼だなぁ
人を鬼畜扱いしてるし
だから
「んー…さぁね?(笑)」
わざと焦らすようにニヤリとして雅紀を見あげる
…いや別に、そんな変な事考えてなかったんだけどね
そう言う事言われれば
やっぱり俺もお返ししてあげなきゃって思うじゃん?
だってほら
雅紀の顔、すっごく引きつってる
「なら、どこに行くか位は教えてよ」
行き先すら知らない雅紀からしたら、分からない事ばかり
まあ、これくらいは教えてあげようか
俺、優しいから
「舞台だよ」
「ブタイ…?」
なにそれ、な不思議顔
「ブタイじゃなくて舞台。お芝居。分かる?」
なんだか子どもに言い聞かせてる気分
「あ、…うん、分かる」
とりあえず頷いたから、良しとするか
「俺のお客さんがね、それに出てるの」
「へぇ…凄いね」
雅紀の、心からの感嘆の笑顔
ヤバい、…それ、反則