飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
関係者のみに配られるパスカードを、頭から外して『関係者以外立ち入り禁止』の場所へ向かう
そして、俺からだと分かるようにメッセージカードと花束を、近くにいたスタッフさんにパスカードと共に託した
「会っていかれないんですか?」
の問いには "用事ができてしまったから " と軽く濁して
戸惑ってる雅紀をそのままに、踵を返した
慌てて後を追ってくる雅紀の足音
俺も、早足を止めて雅紀が隣に来るのを待った
多分雅紀には、いきなり俺が怒ったかのように映ってたんだと思う
違うんだよ
"ぜひ、視て欲しい " って真剣な目でチケットをくれたのに
凄く頑張ってるのを知ってるのに
…初めての準主役だって喜んでたのを目の当たりにしたのに
こうもあっさりと意識を他に持ってった自分が
情けなくなったんだ
「にの?大丈夫?」
「え、」
「なんか…ツラそうな顔してるよ。具合悪くなった?」
雅紀は俺とは違う事、考えてたみたい
「あ、うん大丈夫」
「ちょっと休も?」
劇場を出てから、今度は雅紀に促されるように歩き出した