飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
A side
劇場を出れば三々五々散っていく人達。
「こっち…」
"行こう"
その流れに紛れてニノの手を固く握った。
薄暮の頃。
街は帰路を急ぐヤツラで溢れかえってる。
人並みに逆らうように。
揉みくちゃにされながら。
不意に俺の腕に縋るニノ。
その肩を勢いに任せて抱き寄せ、目の端に捉えた『地下鉄 subway』の表示へと一目散に駆け込んだ。
下り階段を引っ張られ、つんのめるみたいに降りるニノは俺にされるがまま。
閉ざした口唇はツンと尖ってる。
カーテンコール辺りから様子が可笑しいのには何となく気づいてた。
妙に厳しい横顔へ声を掛けそびれ、どうしたものかと考える間もなく席を立つニノの背を俺は追うしかなかった。
寄ってく筈だった楽屋にも行かないで、用意した花束も人に言伝てるなんてニノらしくない。
俺、何かヤラかした?
頭ン中、色々考えてもさっぱり見当つかない。
階段を降りきったトコでニノが手を振り解いた。
「…何?」
何?って…俺の台詞だよ。
地下街の喧噪の中、キッと睨む剣呑なニノの瞳に俺は唾をゴクンと飲み込んだ。
劇場を出れば三々五々散っていく人達。
「こっち…」
"行こう"
その流れに紛れてニノの手を固く握った。
薄暮の頃。
街は帰路を急ぐヤツラで溢れかえってる。
人並みに逆らうように。
揉みくちゃにされながら。
不意に俺の腕に縋るニノ。
その肩を勢いに任せて抱き寄せ、目の端に捉えた『地下鉄 subway』の表示へと一目散に駆け込んだ。
下り階段を引っ張られ、つんのめるみたいに降りるニノは俺にされるがまま。
閉ざした口唇はツンと尖ってる。
カーテンコール辺りから様子が可笑しいのには何となく気づいてた。
妙に厳しい横顔へ声を掛けそびれ、どうしたものかと考える間もなく席を立つニノの背を俺は追うしかなかった。
寄ってく筈だった楽屋にも行かないで、用意した花束も人に言伝てるなんてニノらしくない。
俺、何かヤラかした?
頭ン中、色々考えてもさっぱり見当つかない。
階段を降りきったトコでニノが手を振り解いた。
「…何?」
何?って…俺の台詞だよ。
地下街の喧噪の中、キッと睨む剣呑なニノの瞳に俺は唾をゴクンと飲み込んだ。