飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
「そっち 寄越せ」
言われたのと取られんのが同時の勢い。
一気に飲み干されるコーヒー。
ここまで追い込んまないとアクション起こさない…ンとに困ったちゃんなヤツ。
「……で?」
氷をガリガリしながら刺々オーラを俺へ向けるニノに
「やっといつもの"ニノ"になった」
緩んだホイップをストローの先で突きながら上目れば
「何?"いつもの"って」
「その小憎らしい何様オレ様な態度」
額を小突くフェイント仕掛け慌てて仰け反るから
「馬ぁ鹿」
間髪入れずにデコピンを見舞う。
フンッと鼻息荒く
「雅紀のクセに生意気」
デコピンのやり返し。
「生意気って何だよ」
更に応酬。
「だから…」
停戦したのはニノ。
「何が言いたい?」
「ニノ、今 この甘いの買った俺に怒ってるじゃん」
"そりゃそうだろ"
そんな感じにストローをクルリと回す指を見ながら
「だったらさ、デート中の些細なミスってコトでフォローの仕様あるンだけど……」
ニノが俺をジッと見た。