飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
「さっきまでのニノ…何が何だか…俺にはさっぱり分かんなくて…」
口を開こうとするニノを
"待って"
手で止めて
「義理立てするニノが……明らかに可笑しかったもん」
一息吸って
「俺のせい?」
何かヤラかしたンなら言って欲しい。
フォロー てか挽回したいじゃん。
そのお芝居のチケットくれた人にも申し訳ないし。
項垂れる俺にデカい溜め息を吐いて
「いい歳した野郎が "もん"とか付けンな」
旋毛を叩いたニノはテーブルの上をさっさと片付けるとトレイを手に席を立った。
「ニノ!」
「何でオマエは全部引っ被ろうとすんだろな」
独り言ちるみたいに。
"行こう"
出口辺りをニノは顎でしゃくった。
*
何処へ行くんだろ。
さっきとは逆の流れに乗って地上へと戻った俺達。
目の前の赤信号をボンヤリ見詰めた。
そんな俺へいきなり人目も憚らず腕を絡めるニノ。
「ど、どうした?」
思わぬ不意打ちにキョドる俺を見上げる目が交差点の向こうへと誘う様に向けられた。
その先には目映くライトアップされたホテル。
戸惑う間もなく信号が赤から青になった。