飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
N side
青になると同時に、絡めた腕を引っ張って歩きだす
横断歩道で止まるわけにはいかない雅紀は
引っ張られるままに歩くしかなくて
「ちょっと、にの?!」
言葉だけで、制止したとこで俺が聞くわけないのも分かってるけど、黙ってはいられないらしい
渡りながら、何とかしようとあがいている
だけど渡り切ったところで、絡ませた腕を振り切るようにして離した雅紀は
今度は俺の肩を掴んで正面に回り込んできた
「待ってよ、にの」
「…なんだよ」
「どこ行こうとしてる?」
「分かってんだろ」
途端に雅紀の顔が赤くなった
「…本気?」
「そうだと言ったら?」
睨むように雅紀を見つめる
ー…誰のせいだと思ってんだよ
俺の一挙一動やたらと気にして
何でも自分のせいみたいに思い込んで
悪くもないのに落ち込んで見たり
かと思えばわざとふざけた事してみせたり
ー…振り回されてるの、俺の方だよ
雅紀のくるくる変わる表情に、いつだって振り回されてる