飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
N side
「俺…お前の事…」
つい、口から出てしまった呟き
こんな時に言うの、狡いって分かってるけど
嵌めてるみたいで少し胸が苦しいけど
怯えたような、…だけど気になって仕方ないような
そんな瞳を向けられたら
…素直になるのも、悪くないのかな
なんて思ったりしてる自分がいて
濡れた手で雅紀の頬に触れれば
ビクリ、と体を揺らす雅紀に
「…そんな怖がるなよ」
思わず苦笑する
だけど
いざ口に出そうとすると、やたら恥ずかしくて声が出ない
たった一言、のそれが言えない
体を弄るのは出来るのに
弄る…ってか、本当は愛しくて仕方ないのに
だけど多分、雅紀には
そこに俺の気持ちが入ってないと思われてる
ただ、玩具にして遊んでると思われてる
「雅紀……」
頬に置いた手で、優しくそこを撫でる
とっくに止まっている涙の後を拭うように、指を滑らせると
また、ピクリとその頬が小さく震えた
「ねぇ、雅紀」
「…なに」
睨むように俺を見る
その目は、俺の奥深くまで読み取りそうに深い
いいよ
…読み取ってよ