飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
『遅くなるなら連絡くらいしてよね』
次のメールも彼女からだった
連絡も何も、まだ一緒に暮らしてる訳じゃない
勝手に入り浸っておいて何言ってんだよ
…ああ、そうか
“入り浸ってる“ って感じるくらい、もう俺の気持ちは彼女から離れてるのか
だけど両親に挨拶まで済ませて、婚約までしてしまった今
“結婚は白紙に“ なんて簡単に出来る事じゃないのは百も承知で
俺には何の選択肢も残されてない
せめてもの抵抗でこのメールも無視して、スマホをポケットにしまう
後でどう言われようがどうでもいい
どうせもう、彼女から離れる事は出来ないんだから適当に謝ればいい
たらたら歩いていたら
後ろからバイクの大きな音が聞こえてきた
夜ってやっぱり響くなぁ…なんて思いつつも
自分には関係ないかと気にする事なく歩き続け
…自分の少し先で、急ブレーキで止まったそのバイクに驚いて思わず足が止まった
急ぐようにバイクを降りて、ヘルメットを外したその人を見て
「なんで……」
驚きのあまり、口に出して呟いていた