飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
A side
俯いて。
鼻をグスッと啜る音。
どんな顔になってるかなんて想像だにしなくても分かる。
だからそこには敢えて触れず
「…送ってく」
髪をワシャワシャ掻き混ぜ、
「タンデム…」
俺の真後ろのシートをポンポン叩きながら目で
"…大丈夫?"
「多分…」
口ごもるのは送られるコトへの躊躇いとタンデムへの不安半々ってトコか。
四の五の言われる前にヘルメットをホイと手渡し
「被って」
送ってくのを主張する。
頭をフルフル振って俺を見る目が赤く潤んでるのは見て見ぬフリしてやンだからさ
"……送らせろよ"
ヘルメットをも一度グッと押し付けた。
渋々受け取った二宮さんが窮屈そうに頭をメットに納めて。
そこで掲げるように手を掬い取るとシールド越しの目がこっちを睨んでベシと勢いよく手が払われた。
さっきまでと違う、いきなり向けられた強気な仕草。
そのギャップ差が妙に可愛くて。
「何 ニヤけてンです」
頬っぺたをムギュと抓られた。
どうやら俺、彼のコトが気になってるっぽい?