飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
「…ンしょ」
俺の左肩を支えにする手と小っさな掛け声。
アスファルトを蹴った反動で持ち上がった身体が後ろのシートにストンと収まった。
「…軽っ」
言った途端、ヘルメット頭突きでゴンと背中をどやされた。
「何処まで?」
さりげなく聞いたものの
"あわよくば二宮さんの自宅が知れるかもしれない"
なんてほくそ笑んだのが悪かったのか、彼が言ったのは料理教室のある ここからだと15分程のトコロにある駅名。
「其処が最寄り?」
視線が逸らされたのはそうじゃないってコトだろう。
「いいよ、近くまで…」
「いいンです、その駅で」
被せ気味に言われてようやく気づいた。
家を知られたくないンだ。
もしくは家に誰か居るとか。
何にせよ"一人"じゃないと不味いってコトなンだろうな。
俺は上げてたシールドを降ろして、アクセルを一度ドゥルンと強く空吹かしした。