飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
「あ、さっきは…」
"…ホントにゴメン"
ヘルメットで変なクセのついた毛先を指を伸ばして少し触る。
ビクッと半歩下がられて。
顔が強張ってンのが分かるくらいの苦笑いを返して手を引っ込めた。
自宅まで来てくれたコトを何か勘違いしそうになってる心にブレーキが掛かる。
ヤバい ヤバい。
のめり込む前に身を退かなきゃな。
あのメモだって、電話くれたのだって…大した意味なんかないンだろう…偶々だよ、何かの気紛れ。
「……退屈しのぎにはなった?」
そう言ったら
「えっ?」
怪訝な顔するから
「時間潰し……かな?」
二宮さんの顔がクシャと歪んで
「………馬鹿!」
怒鳴るのと一緒に手にしてたヘルメットを叩き落とされ、向こう脛まで蹴飛ばされた。
「ウワッ!…痛ってぇ」
怯んだ隙に改札へと身を翻す二宮さんの背中。
遠目に今日も見えたペンギン印のICカード。
"行く先は教えてやンねーよ"
そんな風に拒否られてるようだった。