飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
強引に病院の所在が書かれたメモを握らされて
挙げ句には勝手にタクシーまで呼ばれて
到着したそれに押し込めるように乗らされて
…子どものお使いよろしくタクシー代まで渡されたら
俺に断る選択肢なんてある訳がなくて
そりゃ事故ったと聞いたから
相葉さんの事は凄く心配だし、気にはなる
だけど病院に行けば彼女がいる筈
あんな事を言われた後に顔はあまり見たくない
相葉さんが俺の事を何て伝えてるか分からないけど
知らん顔で挨拶出来る程俺は人間出来てない
どうしよう
相葉さんの状態は気になるけど
このまま帰ってしまいたい
会えなかった、とでも嘘を言ってごまかそうか
…そうだ、それでいいじゃないか
「…着きましたよ」
だけど
頭の中で葛藤してる間に、タクシーは無情にも病院に到着してしまい
俺は帰るタイミングを逃してしまった事に気が付いた
こうなったら腹を括るしかない
無事かどうかだけ確認してすぐに帰ろう
彼女がいたら、遠目で見て
会わずに帰ればいい
受付で病室を聞いて、落ち着かない鼓動を深呼吸で抑えながら
相葉さんのいる、病室の前に辿り着いた