飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
4人部屋の入口には相葉さんともう1人の名前しか書かれてなかった
名前の位置からして、窓際の方らしいけど
カーテンが閉まっていて、入口からでは様子が全く分からない
入ろうかと足を進めようとして
聞いた覚えのある女性の声が中から聞こえてきて
それが彼女の声だと分かってすぐに足を止めた
彼女が帰るまで待つしかないか
ここまで来て会わずに帰るのもどうかと思うし
…やっぱり一目、無事を確認したい
一番無難なエレベーター近くの休憩室に移動して
目立たない奥の椅子に腰掛けて、ようやく少し力が抜けた
ここならわざわざ中を見ないと見つかる事もなさそうだし、エレベーターは見えるから彼女が帰るのも確認できるだろう
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そう時間を置かずに
カツカツとしたヒールの音が聞こえて来た
チラリと視線を送ると、彼女が、エレベーターに向かっているのが見えた
…何か凄い怒ってない?
病棟に似つかわしくないヒールの音と、その表情からそれが窺い知れる
彼女が乗ったエレベーターが閉まるを確認してから
俺はゆっくり腰を上げた
喧嘩?の後に行くのは何だか気が重くて
正直帰りたくなる