飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
重い足取りで病室の前まで来たら、変な緊張が襲ってきた
個室ではないから酷い状態ではなさそうだけど
やっぱり傷付いた姿はあまり見たいもんじゃない
でももう、ここまで来てあれこれ考えても仕方ない
「失礼しまーす…」
申し訳程度に入口で声を掛けて中に進む
そして
「…相葉さん?」
恐る恐る、窓際のカーテンの隙間から覗き込んだ
「え…っ二宮さん?!」
ベッドを起こして座っていた相葉さんが驚いた声を上げる
頭に巻かれた包帯と、左の頬に当てられたガーゼ、吊るされた左足
「…何やってんですか」
弱ってはなさそうな相葉さんにホッとして、こんな言葉が口から出てしまった
「バイクですっ転んだ」
相葉さんが苦笑する
「この雨の中、バイクって…バカですか?」
憎まれ口でも叩かないと、いくら元気そうでもその姿に涙が出そうだった
「本当、バカだよね」
そう言って笑ってくれるから、安心して力が抜けてしまった
“座ってよ“ と促されて、丸椅子に腰を掛ける
ふう、とため息をついた矢先
「二宮さん、どうして俺が事故ったの知ってるの」
それを待っていたかのように相葉さんが訊ねてきた