飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
"確か…"
朝からの一連の流れを脳内でリプレイしながら…ようやく料理教室へ行く道中でヤラかしたんだ…と繋がった時系列。
どうにか頭の中を片せてホッとしたのも束の間、勢いよく病室のスライドドアが引かれたかと思うとハイヒールの尖った音が入ってきた。
エルメスのバーキン片手に凡そ見舞いに来たとは思えない居丈高な態度で現れたのは
「…ショーコさん」
俺の彼女、その人で。
ズカズカとベッドサイドの椅子に腰かけると部屋を見渡し
「古いわね…しかも狭いし…」
配膳された食事をクンと匂い
「…質素」
作りモンの眉を顰めた。
彼氏の一大事に
"大丈夫?"
その一言もなく、いきなり病院の査定ってどうよ。
唖然とする俺の、文字通り頭の先から足の先まで観察すると
「…で?」
は?
"…で?"
とは?
呆けた様に彼女を見返す俺に
「何でこうなったの?」
ピシャリと言い放つと腕を組んでふんぞり返る。
"オマエは何者なんだっての"
もう突っ込むのも面倒。
だから
「…帰れ」
頭からスッポリ上掛けを被った。