飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
たっぷり10分は俺を罵倒した挙げ句、ベッド柵に蹴り一発入れて
「お大事に!」
鼻息荒くショーコさんが帰ってく。
彼女がヒートアップするのと一緒に上がってた室温が漸う元に戻った頃
「失礼しまーす」
カーテンが捲れるのと同時に
「…相葉さん?」
顔を覗かせたのは二宮さんだった。
聞けば
"大野さんの代理…行けってしつこいんで"
ボソボソ呟いて、本意じゃないってツンとそっぽを向くのが可愛い……ン?俺、どうかしてる?
とにかく…彼女と鉢合わせしなくて良かったと安堵したものの、このタイムラグじゃ院内の何処かで顔合わせたかも…そう思うと内心ヒヤヒヤで二宮さんの顔をさりげなく窺う。
当の二宮さんはいつもと変わらず…と云うか、この間 駅の改札に駆け込んでった時と寸分違わぬぎこちなさ満載なまま。
あの時から何も変わらない微妙に開きっ放しな距離感に気持ちが沈むのは否めない。
けど、そこはめげずに
"来てくれてマジで嬉しい"
破顔一笑、そう言えば はにかむ顔が赤くなって今度はそれにドギマギさせらる。
彼の喜怒哀楽に一喜一憂してる俺って…ホント 何なの?