飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
歩くのはトイレだけ。
手つかずの食事。
一日中、ボーッと外を見て過ごす。
一向に治療へ前向きにならない俺に業を煮やした病院スタッフからの当たりがキツくなるのは至極当然。
今日も動こうとしない俺は松葉杖と一緒に半ば強制的に談話室へ追い立てられる。
フラフラしながら病棟の端まで歩く。
明るい開放的な其処とは裏腹に俺のモチベーションは下がったままだ。
隅のソファに腰を落ちつけ目を閉じた。
*
気づけば案の定寝てたらしく。
ベッドの上とソファ…居場所が変わっただけで居眠ってンのは一緒じゃねぇかと大きく伸びをして。
部屋へ戻れば夕飯が既に配膳されてて、どんだけ寝てたンだと空恐ろしくなる。
シーツ交換のされた冷えたベッド。
腹が空いても気にもならなくなった。
カーテンを引いて白い空間に閉じ籠って
今日も一日終了と欠伸した、その時
「相葉さん!」
面会時間があと5分で終わろうかって時間に
「急な出張で……」
息急き切った二宮さんが飛び込んでくるなり
「……どう云うコトなんです?」
電源オフな俺のスマホを睨んだ。