飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
だって、元気そうとは言え入院している身
何の連絡手段も絶たれれば誰だって心配になるじゃないか
この1週間、どれだけモヤモヤしてたかなんて
きっと相葉さんには分からない
「俺ね、相葉さんのお願い聞くつもりでいたんですよ
…でも、本当にいきなり出張が決まっちゃって支度にバタバタしてすぐに言えなくて、…だから翌日に連絡したけどもう、繋がらなくて…」
「本当に…?」
「え…」
「本当に来てくれるつもりだったの?」
信じられない、と言った顔で俺を見る
「そうですよ」
「なんで……」
“俺なんかより、大事な誰かがいるんだろ“
相葉さんの顔が苦しそうに歪んだ
それまでの相葉さんからは想像出来ない位、弱々しくて
…まるで小さな子どもみたいで
思わず今度は俺が相葉さんを抱き締めていた
何だかそうしなきゃいけないような気がしたから
「にの…みや、さん?」
「…泣けば?嬉しいんでしょ、俺が来て」
だけどすぐに恥ずかしくなって、揶揄うようにそう言って誤魔化した
「泣くわけないだろ」
相葉さんが小さく笑う
少しだけ、空気が軽くなった気がした