飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
だけど出張が決まった時
相変わらず俺の家にいた彼女と喧嘩になった
それまでの不満の蓄積もあったけど、彼女の言葉に一気に愛情が醒めた
「出張なんかより、式の方が大事でしょ?!」
薄々感じてはいたけど
彼女は、何よりも誰よりも自分が一番じゃないと気が済まなくて
都合が悪くなると親を味方に一方的に抑圧的になる女だったんだ
それでも確かに愛していた
だから婚約まで至った筈なのに
決まった途端に次々に現れる彼女の本質に耐えられなくなっていって
…耐えようと思ったけど、もう限界を感じてた時のその一言が決定打になった
出張が終わった今週末、俺はきちんと別れる為に彼女の実家に謝罪に行く
相葉さんからのお願いを盾に
それまでの間、相葉さんの顔を見て、他愛ない話をして
自分のモチベーションを保とうとした俺は狡いのかもしれない
だけど今、縋れるものはそれしかなかったんだ
相葉さんに気持ちを伝えるつもりはない
だって、相葉さんには彼女がいるし
それを壊したいとも思ってない
そもそも相葉さんに気持ちなんて言ってしまったら
この不思議な縁も終わってしまうのは分かってるから
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