飴と鞭と甘いワナ
第11章 3匙め
「相葉さん」
約束通り、俺は仕事帰りに毎日病院に寄った
行くたびに “今日も来てくれた“ と喜ぶ相葉さんの様子が、やっぱり入院前の雰囲気と違うのを感じていて、少し心配だった
儚いと言うか、覇気がないと言うか
笑ってはいるけど、心からの笑顔じゃなくて
だけどそれを聞く事なんか出来なくて、今日も歯痒さを感じてた時
何気無くテレビの前に置かれている雑誌の下に目が止まった
隠すように一番下にあるそれは雑誌じゃない
端っこだけ見えてるそれは、……絵本?
相葉さんが絵本?
しかもかなり年季の入ったもの
「相葉さん、それ、…絵本?」
何の疑いもなく、軽い気持ちで聞いた
“ああ、これ?“
相葉さんもそう言って普通に見せてくれたから
それに有名な絵本だったし
だから “相葉さんに絵本なんて“ って笑い飛ばすつもりでいた
だけど
相葉さんから聞かされた内容は、とてもじゃないけど笑い飛ばすなんて出来るものじゃなくて
「…ごめん」
俺はそう頭を下げる事しか成す術がなかった