飴と鞭と甘いワナ
第12章 4匙め
突如何を言いだすのかと思いきや…そりゃまあ こんな頻回に顔を出してて一度も遭遇しなけりゃ誰だって不審に思うだろ…仮にも"彼女"ポジなんだから。
俺的には別れたも同然なオンナ…もう忘却の彼方だよ、その存在が。
「あぁ…アノ人にはパトロンが居るから…それにさ…」
枕頭台の絵本を手に取って
「俺の素性は宜しくないし…」
言外に別れたんだと匂わす。
察しのいい彼だから上手く汲み取ってくれるだろう。
眉尻を下げた二宮さんの手が膝上でギュッと握られた。
口唇をムグムグしながら何を逡巡してるのか。
言い出すタイミングになればと手近にあったリモコンでテレビをつけた途端に姦(かしま)しい女芸人の声。
ふと目をやればその賑やかさの中にタレント然としたショーコさんが座ってた。
民間療法の是非を相変わらずの切り口上でバッサバッサと薙ぎ払ってる。
あの目尻やふっくらした頬骨の辺り、ヒアルロン酸打ちまくりの底上げ顔面をボンヤリ眺めて
"あの面をツマミに二宮さんと家呑み出来たら…"
そんなあり得ない妄想に頬がニヤけそうでヤバかった