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飴と鞭と甘いワナ

第12章 4匙め

A side

「俺の家、来ませんか?」

え?…俺の耳が幻聴を起こした…ワケじゃないよな?

確かに

"俺の家"
そう聞こえた。

どう云うコトだ?

一人寂しく退院したのは今日の午後。

それでも夕刻には二宮さんと会えると何とかモチベーション上げて。

漸う指定された駅前に行けば何ヤラかしたンだってくらい目も当てらンない悲惨な顔が俺を待ってた。

何だ何だ?と面喰らう俺を尻目に極めつけは自宅へのお誘い。

昨日の今日で何でそんな顔になってンだとか、野暮用って何処で何ヤラかしてきたンだとか。

色々聞きたいコトはあるのに驚きの連続に凌駕されっ放しで何も聞けずな俺。

ただ繁々と腫れた口元を見て

"そうだよ…コーヒーショップの人の目の多さは不味いかもな"


そう云うコトだろうから唐突な自宅への招待には左程深い意味は無いんだと一応納得したフリしたものの、テリトリーに一歩踏み込めるかもしれない事実は俺の顔を火照らせた。

「俺の部屋じゃダメ…」

“……だったら“

声のトーンの落ちた二宮さんは、さっき俺が指差したコーヒーショップへ足を向けようとするから

「…ちょっ…待っ…」

松葉杖の先をヒョイと出して行く手を阻んだ。



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