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飴と鞭と甘いワナ

第12章 4匙め



改札を出た先の見慣れぬ風景はやけに新鮮で。

キョロキョロしてると

"こっちです"
腕をグイと引かれた。

そうするのが当たり前のように入っていく駅前のコンビニ。

アイコンタクトだけで

"飲む?飲まない?"

やら

"食べない?食べる?"
そんなやり取りをする。

レジ前で財布を出そうとするとあからさまにムッとした顔が子供じみてて。

プッと吹き出しそうになるのを何とか飲み込んだ。

"こんな顔するんだ"

カゴに放り込まれたビールとか、おつまみはチー鱈と柿の種が好みなんだとか。

思わぬところで思わぬコトが知れて嬉しくなってる俺。

レジ横のホットスナックからポテトと唐揚げをチョイスして。

これは別会計で俺の奢り。

隣で

"俺が買うのに"
頬を膨らませてるのは無視無視。

店員のダレた"ありがとうございました"を聞きながら店を出て、10分程ゆっくり歩いたその先で

「此処です」

二宮さんが見上げたのは年期の入った5階建てのレトロなビル。

昭和初期に建てられた商業ビルをリノベーションして居住区を作ったその一角の部屋が二宮さん家らしかった。

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