飴と鞭と甘いワナ
第12章 4匙め
N side
「外観は古いけど…中はそこそこ綺麗なんですよ」
コンビニの袋を持ち、相葉さんをビルの入口に案内した
「……」
ふてくされたような目をして、返事すらしない相葉さんに苦笑する
ふてくされた訳は簡単だ
くだらないけど、コンビニの袋を誰が持つかで一揉めして
松葉杖の相葉さんに持たせる訳には行かない俺が
その不自由さを盾に袋を奪って歩いたから
でもそれは
会計の時に俺が誘ったんだから出すって言うのに、ホットスナックを自分で買っちゃって
払わせてくれなかった事への小さな仕返し
そんなくだらないやりとりが、今の俺には嬉しくて堪らなかった
相葉さんは、俺の姿を見た瞬間から色々聞きたいのを我慢してくれてる
気になってるのに、こんなとこで話す事じゃないのを分かってくれて
敢えて聞かないでいてくれてる
だから1つだけ
聞き返されないタイミングを見計らって
「婚約破棄、してきたんです」
これだけを伝える事にした
ー…1つどころか、それが全ての中核なんだけど