飴と鞭と甘いワナ
第12章 4匙め
ソファーや直座りだと相葉さんが大変だろうと思って、キッチン前の椅子に座って貰った
「あ、足は乗っけて大丈夫ですから」
遠慮して下に下げた左足を指差すと “良かった“ とホッとした顔で空いている椅子に足を乗せる
それを見届けてから、買ってきたものの仕分けとお皿やグラスを用意しようとして
…あちこちに残るモノに目が止まった
「すいません、相葉さん…ちょっと待ってて貰っていいですか」
「え、あ、うん、…別に構わないけど」
相葉さんが頷いてくれたから、しまってあったレジ袋を取り出して
目に付く “彼女の物“ をその中に全て放り投げて行った
あちこちに残る彼女の記憶
好きだった時期、甘い時期は確かにそこにあったのに
ー…何でこんな終わり方しちゃったんだろうな
もう、彼女には何の気持ちも感情もないけど
まだ色濃く残る残像はやたら俺を感傷的な気分にさせた
「…どうかした?」
相葉さんの声にハッとして、思わずビクンと体が揺れる
「…なんでも、ないです」
「って言う顔はしてないけど?」
…相葉さんの真剣な瞳に、ごまかしは効かない気がした