飴と鞭と甘いワナ
第13章 5匙め
整理のつかない色んな想いが綯い交ぜになって鬩(せめ)ぎ合う。
情けない顔を見られたくなくて
"……見んなよ"
呟きながらフイと顔を背けた。
その頬へと矢庭に手が添う。
目を向けた視界一杯にスッと屈んでくるその思わぬ急接近に俺はただ硬直するだけ。
口唇からチュッとワザとらしい派手な音に
"…えっ?"
目をパシパサ瞬かせてると
「あの…えと…ゴメン」
目の縁を赤く染めてモゴモゴと口籠もる二宮さんが堪らなく可愛くて。
「謝るのは無し…なんだろ?」
言い返して
「…起こしてくんない」
手を伸ばす。
一瞬、戸惑ってオズオズと指先を摘まもうとするその仕草がとかく焦れったい。
躊躇(ためら)う その手をグッと引いて左手で背中を抱き寄せた。
"ぅわっ!"
引き寄せた反動で今度は仰向けにゴツと後頭部を床で痛打したのはご愛嬌ってコトで
ヘヘッと照れ混じりに笑えば
"もう…何なんですか、アンタって人は "
肩口に額を擦りつけてンのがまるで子供。
髪を撫で、あやすみたいにして聞いてみた。
「こんな俺って……嫌?」