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飴と鞭と甘いワナ

第13章 5匙め



「…なんてね」

不意に柔らかくなった口雰囲気にこっちも詰めてた息をソッと吐く。

今のは何?

単なる揶揄いにしてはヤケに生々しいリアルさ。

ニコッと笑い返されてもひきつった笑いを作るのが精一杯。

深く突っ込むコトも出来ずにいると

「も少し呑みます?それとも…」

目が向けられた先にはカゴに入った簡単ドリップコーヒーのパッケージ。

これ以上のアルコールは変に悪酔いして余計なコトを口走りそうで。

だから

「……コーヒーあるかな?」

二宮さんも何処かしらホッとした、そんな風に見えんのは強ち間違いじゃないと思う。

電気ケトルのスイッチを押しながら

「相葉さん…それ取って貰えませんか?」

食器棚の上の何かを指さす。

手を伸ばして取れば埃まみれの灰皿。

「元カノが五月蝿くて…」

"…髪に匂いがどーのって"
こんな忌々しそうな顔もするンだと見てれば

「オマエの化粧の匂いこそどーにか…アッ」

俺のジト目に気づいてあたふたとカップの縁にドリップコーヒーをセットすると

「…まだかな」

居た堪れなさげに電気ケトルのスイッチを指でイジイジ弄るのが俺的にツボった。

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