飴と鞭と甘いワナ
第13章 5匙め
早くも"元"とかって笑える。
半日前まではリアル彼女だったオンナの名残をレジ袋にとっととゴミレベルで突っ込んだり。
積もった埃を払わないまま、吸い殻を擦りつけるのは我慢に我慢を重ねた日々への当て付けなのか。
彼なりにケジメをつけようとしてンだろうな、何てコトをツラツラ考えながら湯気越しに二宮さんを窺う。
「俺、仕事を辞めようかと思って…」
"さっき言ってなかったかも"
そう前置きして、カップの中のコーヒーに視線を落としながら
「……したら彼女…あ、元カノ何て言ったと思います?」
ヒクと彼の頬が引き攣ったように見えた。
「『アンタみたいなチビでヲタク…会社って肩書き取ったら何の値打ちもないでしょ』って…」
"…ね?スゴくない?"
そう一気に言うと顔をクシャと歪めて
「その後に…」
"…コレだよ"
グーパンを口元に当ててタハハとヒドく辛そうに微笑った。
「殴るわ、大泣きするわ…」
肩を竦め、頬杖ついてフイと横向いた頬に涙が一筋。
「…別れて清々した」
顎の先に伝った雫がポトンとテーブルに落ちて小さく弾けた。