飴と鞭と甘いワナ
第13章 5匙め
そう言われてしまえば上げない訳にはいかないじゃないか
唇を噛み締めたかったけど、切れてる口の端が痛くて
代わりに落ち着きなく、そこをムニムニと動かすのは
…どんな顔をしていいか分からないから
顔を上げた途端に相葉さんがふはっ、と笑った
「その唇が可愛い」
「…え?」
「そうやってムニムニするの、癖だよね」
痛いからそうしたつもりだったけど
言われてみれば、確かに落ち着かない時はしてたかもしれない
…癖だったなんて、思ってもみなかった
思わずぱっと右手で唇を隠す
「だーめ、隠すの禁止」
だけどすぐにその手は掴まれて、そのまま指を絡め取られて下に下ろされた
すぐに反対側も同じようにされてしまう
柔らかくて優しい拘束
絡めた手が汗ばんでいくのが分かるけど、これを離したくはない
「あ、またムニムニした」
「…言うな!」
揶揄うように言う相葉さんを睨み付けたけど
言葉とは裏腹の、何とも言えない視線が俺を捉えていて
吸い込まれるように俺もその目に引き込まれる
相葉さんの目に、俺が映っている
きっと俺の目にも、相葉さんが映っている