虞犯少年
第19章 生まれた意味
「ここにするのって心臓に一番近いからって聞いたことある」
何時か聞いたことがあった、指輪を左手の薬指にする理由。記憶が曖昧だけど、確か"そこ"からの血管が心臓へと繋がっているから、だとか。指輪を見つめながら呟くと嵐は私の左手を強く握る。
「そういうのはよく知らねーけど、俺はお前に命ごとくれてやれる。だからもう余計な事は考えんな。俺の事しか考えんな」
「……うん」
「誓えよ。お前も俺から離れないって。どんなことがあっても絶対いなくなるんじゃねぇぞ、いいな?」
「…いなくなんない。嵐のそばにいる」
すんなりと受け止めることができた。自分の言葉で、自分の心で言えることができた。
どんな形だとしてもそれが嵐の"愛"なんだろう。
拒むことはもうできない。たった一人でもいいから私だけを見てくれる人の存在が昔からずっと欲しかった。人にはあって私には無いものが多いから一つでいい、私にも誇れる何かが必要で、それはやっとあったんだ。
命をかけて私を愛してくれる人。
だからもういらない。他に望むものなんて、もう何も―――…
生まれた意味
(それはアナタと出逢う為。)