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LIFE

第4章 まだ恋は始まらない〜ぼくにできること〜

二杯目のビールが空く頃、ひと通り話して、どちらかが意見を言ってくれるのを待っていた。

「ね。その人に、いつもみたいに言ったんだよね?」

「なにを?」

「本気にはならない、って。」

「あー、言ったよ。」

潤くんに答えると大野さんが、

「それじゃん。」

と一言。

……

「遠慮?してんじゃない。
だって付き合ってないんでしょ?」

「…うん。まあ。」

「セフレってことだろ?」

「……違う。」

「なにが違うんだ?」

「……」

もう説明が出来なくなった俺は口をつぐんでしまった。

大野さんとのやり取りを聞いていた潤くんが俺の目を見て呟く。

「好きなんだろ?」

そのシンプルな言葉に胸が狭くなる。



………



やっぱりそうだよ。

“すき”

なんだ。

でもさ、“すき”なのくらい自分でもわかってる。

なんなら最初っから“すき”

後はなんだ?

考えてるうちにワケがわからなくなってたら潤くんが俺の整理のつかない思考に気づいて、もう一度訊くから。

「ニノ?
その人のこと好き?」

「うん。好き。」

素直に答える。

「本気にならない程度に?」

「……」

「セフレじゃない、って即答してたけど。」

「…そう。
セフレとかは違う。
ちゃんと好き…だと…思う。」

「それ、言ってあげたことある?」

「…ない。」

呆れたように、はあーっ、と深いため息をついて苦笑いした。

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