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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
智「なんの話を...」
俺に圧倒されて、一言ボソッと呟いた。
翔「現実に戻るかって言ったじゃん。俺の事なんて忘れるつもりだったんだろ」
智「ええ?」
翔「全て無かった事にして、元の世界に戻るつもりだったんでしょ?」
智「なんだよ。そんな事思ってたの?」
翔「俺の事なんて、あっさり忘れちゃうんだ」
智「ふふ、だから震えてんのか…」
俺は子供か。
何なんだこの台詞は。気の利いた台詞どころか、只智くんを攻めてるだけだ。
こんなヤツの所に戻りたいなんて誰が思うんだよ。
智「残念だな」
ほら、俺に幻滅した。
智「本当ちょっと、翔くんて馬鹿なんだよね」
失笑だ。笑いながら、話してる。
智「なんかさ、難しいんだよ。もっと素直に考えればいいのに」
この後に及んでダメ出しをくらう。
智「...変態のくせに」
ああ、しかも俺は変態なんだった。
智「こんな印象派、どうやって忘れるの(笑)」
翔「え?」
智「忘れる訳ないじゃん」
俺は漸く顔を上げた。
智「てか、忘れられないでしょ」
智くんの顔を見ると、優しく笑ってた。
目尻に皺を作って、ニコニコと笑ってた。
智「んも~、俺忙しいんだから。仮病なんだったら帰るよ?」
翔「え、ちょ」
俺の腕を優しく解き、智くんはスマホを手に取る。
そしてそのまま玄関に行き、くるっと俺を振り返った。
智「だから、その顔やめなって(笑)」
ヘラヘラと笑う智くんは俺に向かってくるんだ。
智「帰れなくなるでしょ?」
ふわっと包んで、クスッと笑う。
智「じゃ」
また玄関に向かった。
俺から手を離し玄関に着くと、また静かにドアを開けるんだ。
開いたドアからは、オレンジ色の光が差して。
智「じゃあね、翔くん」
その光の中へ、智くんは消えて行く。
智「また、ね」
淡いオレンジ色に包まれながら、智くんは笑顔を見せた。
少し意地悪そうな、悪戯っ子のような。
幻想なんかじゃないその笑顔は、きっとまた見れる。
風に押されるドアを見ながら、俺はそんな事を思っていた。
SO~研究員×小人~小人の逆襲編~完~