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じんちょうげの花咲く頃

第2章 恋文



天気予報が北陸地方の梅雨入りを告げたその日、



待ちに待った東京の叔父から連絡がきた。



「いつになるから分からないけど、帰国する、って。」



予想外の展開に叔父さんも興奮気味で、



当日までに仕事の調整をし、



現地へ迎えに行く、とか言い出した。



「あ!でも、いつになるのか分からないんだった…。」



と、残念そうに呟いたが、その声は弾んでいた。



向こうから連絡があったらまた電話する、と、



叔父さんは慌ただしく電話を切った。



会える…



お父さんに……お父さんに会える!!



スマホを握りしめたまま小さくガッツポーズする僕の後ろには母さんの笑顔。


その笑顔にも吉報を報告した。



「ねえ母さん、父さん、来てくれる、って?僕に会いに日本に帰ってくるんだって!!スゴいと思わない?」




正直、会えるなんて思っていたなかった僕は、嬉しくてつい、めぐむちゃんにLINEしてしまった。



『よかったね!』



『私も会いたいなあ、叔父様に。』



『帰国する日がわかったら教えて?』



と、矢継ぎ早に寄越してきた。





「そうか!よかったなあ。」



早速、成海のおばあちゃんにも報告したらすごく喜んでくれた。



「いつになるか、まだ、分かんないけどね?」


「…そうか。よかったよかった。」



おばあちゃんは、



箸で白飯を口に押し込みながら、



よかった、よかったと、


何度も繰り返した。


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