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じんちょうげの花咲く頃

第3章 返歌



おばあちゃんの絶品朝食に舌鼓を打った後、



父さんは午後の飛行機で東京へ向かった。



朝食後、僕は宿題を終え、



スケッチブックを広げた。



母さんがいなくなってからは初めてだった。



何描こうかな?



庭先で、郵便配達員のおじさんに構ってもらっているシロの声が聞こえたので、



取りあえずは、シロを被写体に鉛筆を走らせた。



シロは、体格の割りには大人しい犬で、



僕が小五の頃、近所に捨てられていたのを見つけ、拾ってきた犬だった。



母さんに叱られることを 覚悟の上、母さんにお願いした。



でも、母さんはシロを見るなり抱き上げると、



袖やズボンの裾を捲りあげお風呂場でシロを洗い始めた。



見違えるように真っ白に洗い上がった彼を見て、僕は迷わず「シロ」と名付けた。



捨て犬だった彼は、初めこそ人見知りは激しかったけど、



徐々に慣れていき、



挙げ句、初めて会ったはずの僕の父さんにもすぐになついた。



ふあー、っと、大あくびをした後、



シロは、被写体は疲れた、と言わんばかりに、ぺたりとお腹を地面につけウトウトし始めた。


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