じんちょうげの花咲く頃
第6章 エピローグ ①
智「それに笑った顔が…」
そう言いかけた父さんの目を涙の膜が覆う。
父さんは、慌てて顔を逸らし、物凄い勢いでスイカを食べ始めた。
「…それも言われる。性格は似てないけど?って。」
智「そんなこと言われんのか?」
「叔父さんたちに言われた。」
智「アイツら、後でしめてやる。」
「それはやめて?めぐむちゃん、泣いちゃうから。」
智「そうだな?めぐむに免じて許してやるか。」
「叔父さんは大変だなあ?叔母さんにも頭が上がらないみたいだから。」
智「日頃の行いが悪いからだろ。」
「でも、仕事は出来るよ?」
智「そうだな…。それは認める。」
傾きかけた日差しに海風が心地いい。
海を臨むと、オレンジ色の光の玉が水平線に呑み込まれようとしていた。
もう何回、ここでこの景色を見たんだろう?
その景色を今、父さんと見ているなんて信じられなかった。
まもなく、辺りは夜の帳が降りて空には満点の星が瞬き始めることだろう。
初めて父さんと二人で見る景色はどうだろう、って、ぼんやり考えていたら、
隣でぽつり、父さんが言った。
智「零、俺はお前にずっと聞きたかったことがあるんだ。」
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