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じんちょうげの花咲く頃

第6章 エピローグ ①



「どうしたの、急に?」


おしぼりで口回りや手を拭き黙りこむ父さん。



智「俺みたいな父親を持って幸せだったか?」


「何て答えてほしい?」



こんな時、多分、ドラマの主人公だったら笑って大丈夫、僕は幸せだったよ?って言うんだろうな?



だから、言ってみた。



「全然、幸せじゃなかった。」



って。



智「やっぱり…か。」



あなたは立ち上がり、ズボンの砂をぱたぱたと払う。



そして、背中を向けたとき、こう言ってあげるんだ。



「でも、それはそれでよかったよ。」



驚いて僕を見下ろすあなた。



「そのお陰で、たくさんの人が僕を気にかけてくれたし、心配してくれたし。」


智「……。」


「たくさんの人と出会えた。」



悲しい別れもあったけど…。



「ありがとう。父さん。」


…母さん。



二人とも、出会ってくれてありがとう。



「そのうち碧にも会いに行くよ?」


智「ん…」


「めぐむちゃんと。」



一呼吸おいて「そっか」と呟いた。



「ねえ、父さん。」


智「うん。」


「逆に父さんは幸せだった?僕みたいな息子を持って?」



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