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じんちょうげの花咲く頃

第6章 エピローグ ①



そんな父さんの後をつけてみると、父さんは仏間の中に入っていって、



しばらく襖の前で聞き耳をたてていると、父さんが誰かに語りかけるような低い声が聞こえてきた。



智「零は……どっちに似たんだろな?」



少しだけ襖を開けて中の様子を窺うと、



仏壇に立てかけてあった母さんのポートレートを見つめる父さんの背中があった。



智「お前と俺の気性を考えたらあんな仏さまみたいな息子、考えらんねぇよ?」


母さんの笑顔の写真が頷いているように見えた。



智「俺の親父に似たのかもな?…あ、親父、っていってもあの腹黒親父のことじゃねぇからな?」



腹黒親父……お祖父ちゃん、可哀想。



つい吹き出しそうになった。



東京にいる大野のお祖父ちゃんは、長い間、心臓を患っていて、何度か手術もしていたけど元気だ。



それに、父さんは腹黒親父、なんて言うけど、僕にとっては優しいお祖父ちゃんだ。



けど、父さんの言うもう一人のお祖父ちゃん、



父さんの、本当の父親のことは叔父さんたちから聞いていたけど詳しくは知らない。



分かっていることは、成海のおばあちゃんの甥っ子だった、ということ。



僕と母さんの面倒を見ていてくれたのもそんな縁があったからだ、ということだった。


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