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続・あなたの色に染められて

第6章 すれ違い


『京介さ~ん こちらのお客様をお願いしま~す。』

まるで水を得た魚のようだった。

あんなに頑なに閉じていたキミの心を京介さんはいとも簡単に抉じ開けたんだ。

『あのワインも一緒に試飲できる?』

『出来ますよ。あれ?風間く~ん!』

裏方でこっそりあくびをしている京介さんを見つけると 昨夜の二人を想像してこっちは溜め息を漏らす。

『璃子ちゃんこっち!』

どんな結果であれボクが選ばれることはなかったのだろうな。

『ありがとう!』

だってボクはこんな風にキミをとびきりの笑顔にすることは出来なかった。

あの人にあってボクに無いものってなんだろう。

ルックスはそこそこだし お互い同じように伝統という見えない何かを伝えていく身だし

『風間ー!このワイン注文したいって。』

『まいど!』

たぶんボクの方が愛想もいいし

『璃子ちゃん少し休んだら?』

『ううん まだ大丈夫!』

気も利くはずなんだけどな

それなのにキミの愛しい人はこの5日間も平気で放ったらかしにして

『疲れたぁ 風間、コーヒー飲もうぜ。』

仕事をキミに任せてカップにコーヒー注ぐ京介さんで

『いいんですか?璃子ちゃん放っといて。』

だから少しだけボクの方がキミを気にかけてんだぞ なんてアピールしながら突っ掛かってみるけど

『いいんだよ。俺が休まねぇとアイツ休まねぇから。』

…さすがだ。璃子ちゃんの取扱説明書が京介さんの頭にしっかりと入っていて

『悪かったなおまえまで巻き込んじまって。』

なんてダンナさんらしくボクに頭まで下げた。

だからボクも負けじとポケットに手を突っ込んで窓越しに晴れ渡る空を見上げながら

『今度 泣かせたら本気で奪いにいきますから。』

なんて 宣戦布告っていうのか?勝ち目なんかないってわかってるけど

『奪えるもんなら奪ってみろよ。』

『挑むところですよ。』

なんて キミの知らないところでまた炎を燃やす。

『あっ ずるーい!私がそのコーヒー淹れておいたんですよ!』

口をプウッと膨らますキミに京介さんは飲みかけのカップを差し出した。

そのカップを大事そうに包み込んで美味しそうに一口飲む

人のモノとはいえ 手を伸ばしたくてしかたがなかった愛しいキミ

『美味しぃ。』

柔らかな微笑みがこれからもボクを幸せな気分にしてくれるのは間違いないな。

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