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続・あなたの色に染められて

第9章 Present from God


『えっと…確認いたしますので少々お待ちください。』

スマホを握りしめて駆け出す先は年末に向けて出荷の準備に追われている本蔵

…ガラガラガラ

大きくて重たい扉を引いて

『すいませーん、限定のにごり酒っていつ売店に並びますか?』

目一杯声を張り上げる私

『来週には並べたいって思ってるけど…問い合わせ?』

『あ…竜介さん!斎藤さまが来週の頭に3本用意してほしいそうなんですけど…』

『了解、斎藤さんからの注文ならなんとかするよ。』

『わかりました!…もしもし大変お待たせしました…』

12月に入り通常業務の他に育児休暇中の香さんの仕事までこなす私は毎日慌ただしい日々を送っていた。

…これじゃ今日もお昼食べれないかも

電話を終えて扉の前で一息着くと大きな扉から竜介さんがひょっこり顔を出し

『斎藤さん待てるって?』

眩しそうに空を見上げた。

『はい。』

『じゃあ 来週俺が直接持ってくよ。』

『よろしくお願いします。』

竜介さんもまた新年に向けて毎日出荷作業に終われていた。


『璃子ちゃんはミルクティー?』

『あ…すいません。』

自販機でこの時期にしては珍しい冷たい缶コーヒーを買った竜介さんは

『はいどうぞ。』

少しだけコーヒーブレイクらしい

『いただきます。』

差し出されたミルクティーを受け取りながら一緒に空を見上げると

『悪いな香織の仕事まで任せちゃって…』

『いいえ…私に出来ることなら。』

コーヒーを美味しそうに一口飲む。

『何か顔色悪くない?』

『そうですか?』

『璃子ちゃんが倒れたらうちの蔵はおしまいだから無理しないでくれよな。』

なんて いつも気を使ってくれる優しいお義兄さん

確かに毎日続く残業と休日返上の日々で体は疲れていた。

『マジで璃子ちゃんに何かあったら京介に何言われるか…』

『平気ですって。球納めの日にお休み頂きたいので少しだけ張り切ってるだけですから。』

そう…この球納めに顔を出さなければ私たちに新年は訪れないのだ。

『球納めか…今年は俺も出てぇなぁ…』

『出ましょうよ!』

『よし!それじゃもう一息頑張るかな!』

飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に放り投げると

…カランカラン

さすがに名門野球部出身

『ナイスボール!』

吸い込まれように真っ赤な缶はゴミ箱に入った。

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