続・あなたの色に染められて
第9章 Present from God
『…。』
イチゴが一粒飾られた京介さんの手のひらに収まるぐらいの丸いショートケーキ
『食う?』
本当ならその甘い生クリームを頬張りたいんだけど
『ううん…いらない。』
…ボスっ
『フンだ。』
またあの吐き気に襲われると思うと怖くてソファーに背を投げた。
『少し食わなきゃダメだぞ?』
大きな口を開けてケーキを頬張る京介さんが羨ましいったらない
『私だって…食べたくない訳じゃないもん。』
手のひらでクリスマスツリーをクルクルと廻しながらヘソを曲げてる私は京介さんから見たらさぞ面白いのだろう。
『じゃあ…』
京介さんは一つだけ乗せられたイチゴをつまみペロリと生クリームだけを舐めると 真っ赤なイチゴを薄い唇に挟み
『ん。』
私の方に微笑みながら顎を突き出した。
『…え。』
『はあく。』
イチゴの甘酸っぱい香りが私の鼻孔を擽ると 彼の肩に手を添えて 視線に導かれるようにイチゴを口内に迎え入れた。
『どう?』
イチゴ独特の甘酸っぱさと甘い香りが思っていたよりも口内をさっぱりとさせてくれて
『うん…美味しい。』
私を少しだけ笑顔にさせた。
『やっぱり経験者は語るな。』
『経験者?』
京介さんは私の膝の上にゴロンと寝っ転がると
『売店のオバチャンに璃子の話したら果物なら食えるんじゃないかって。』
それでわざわざイチゴのショートケーキを…
『明日から八百屋のおっちゃんに毎日発注しようっと。』
京介さんはイタズラに微笑みながら私のお腹の方に寝返ると
『触っていい?』
『いいですよ。』
恐る恐るというのか…優しくゆっくりと言うのか…大きな手のひらを私のお腹に添えた。
そして目を閉じてスーっと息を吐くとその感触を噛み締めるように
『ここにいるんだよな。』
自分に言い聞かせるように…
『すげぇな。』
そう呟いた。
すると 優しく撫でながら
『ママをあんまり苦しませるなよ。』
優しい声でお腹の赤ちゃんに話しかけた。
…初めてだった
私のお腹に触れたのも話しかけてくれたのも
『俺たちを選んでくれてありがとう。』
そしてパジャマを捲り上げるとそっとお腹にキスをした。
『…京介さ…』
嬉しくて…すごく嬉しくて…
『逢える日を楽しみにしてるからな。』
そう言ってもう一度私のお腹にキスをした。