続・あなたの色に染められて
第2章 幼馴染み
『こんにちわ~。』
由緒正しき酒蔵に嫁いだ私は嫁いだ日を境に 勝手口から出入りをするようになった。
それはこの酒蔵に代々伝わるお嫁さんの風習。
玄関は男の人やお客様のためのもの。勝手口は嫁いだ私たちの出入り口。
他にも暗黙のルールはあって勝手口の先にあるキッチンは男子禁制。家事全般は女の人の仕事。
まぁ 出逢ったばかりの頃の京介さんを思い出せば「なるほど」と思い当たる節ばかり。
いつもは勝手口から入るとお母さんなり竜介お兄さんのお嫁さんの香織さんがいらっしゃるんだけど
『あれ?』
今日はキッチンには誰の姿もない。でもその代わり対面キッチンの奥のリビングからは賑やかな笑い声。
『璃子?』
顔を覗かせたのは玄関から入った京介さん。
『こっちおいで。』
『はい。』
彼の背中を追いかけてリビングに顔を出すと
『紹介するよ。俺のカミさん。』
『はじめまして 璃子です。』
私は深々と頭を下げると
『やだー!可愛い奥さんじゃない!』
私の言葉に被せるように響き渡った張りのある通る声。
『へ~ 京介はこういう子がタイプだったんだぁ。』
私は戸惑いながらも顔をゆっくりと上げると そこには 声の主からは想像もできないほと綺麗な大人の女性
『沙希うるせぇよ!』
…幼馴染み…って言ってたよね?
緩く巻かれた焦げ茶色の髪を後ろに一つに結んで襟の高い白いシャツをパリッと着て アクセサリーで飾らなくても充分 華のある人。
『私 竜介と京介の幼馴染みの沙希。それとね…あっ!和希!ちゃんとこっち来てご挨拶して!』
テレビの前でグローブとボールを握る10歳くらいの男の子。
『和希です。』
ペコリと頭を下げられたけど 私には何が何だかいまいち理解できない。
だって 幼馴染みって…
勝手に幼馴染み=男の人と思い込んでいた私の目の前にスッと出された真っ赤なマニキュアが綺麗に施された手。
『よろしくね、璃子ちゃん!』
『…は…はい。』
見た目とのギャップがかなりある元気のいい女性。
でも その差し出された手を握り返すと 柔らかくってあったかい。
『ほら!和希もよろしくお願いしますでしょ!』
『痛えよ!』
頭をグイッと押されて挨拶させられ
『こ…こちらこそよろしくお願いします。』
私もその迫力に圧倒されてもう一度頭を下げた。