続・あなたの色に染められて
第2章 幼馴染み
キッチンでおかわりのコーヒーを落としていると
『璃子ちゃん お手伝いしようか?』
少し疲れた顔をした香織さんが入ってきた。
『大丈夫ですよ。香織さんは少し座っててください。』
最近少しお腹が目立ち始めた香織さんは只今二人目を妊娠中。
『平気よ。つわりもだいぶ楽になったし 安定期にも入ったから。』
キッチンの椅子に腰掛けるともう覚めてしまったミルクティーを口に運んで束の間の休憩。
リビングからは相変わらず賑やかな笑い声が響き 懐かしい幼馴染みとの会話に花が咲いてる。
『あの…香織さんは沙希さんのことご存知だったんですか?』
リビングでは何となく聞けなかったことを聞いてみる。
『写真立てに仲良く三人で映ってる写真があるから少し知ってたよ。お母さんからも話を聞いたこともあったし。』
沙希さんは京介さんのひとつ年上で 小学3年生になる和希くんと二人暮らし。
3年前にダンナさんが急な病で他界してしまったそう。
それから息子さんと生活するために昼はスーパーで、週末は実家に子供を預けて夜の街で働いて。
そして昨日 偶然お客さんに誘われて入店したお店で京介さんに付いてくれたのが運命の再会だったそう。
コポコポコポ…。
コーヒーがポットにたまると私は用意しておいたカップに注いで
『おかわりどうぞ。』
リビングへと運んだ。
『じゃあさ、とりあえず来月からってことでどう?』
『え…でも…本当にいいの?』
『困ったときはお互い様よ。うちで正社員として働けば夜のお仕事やめられるでしょ?』
『…おばさん。』
『和希に寂しい思いさせなくてすむだろ。』
『それに沙希は学生の頃バイトしてたからこっちも楽だし。』
『京介まで…。』
『実家から通えるから和希くんに何かあっても大丈夫だし親御さんもこれなら安心だろ?』
『おじさん…ありがとう。』
何度も何度も頭を下げる沙希さん。
『では…お言葉に甘えて。よろしくお願いします!!』
見ていて本当に気持ちのいい人だった。
誰もが手を差しのべたくなるような一生懸命さが滲み出てるような人。
『よし!決まりだな!』
竜介さんが手をパチンと叩くと
『和希~!やっと就職先見つかったよ!』
『マジ?野球できる?』
『もちろん!』
沙希さんは和希くんの頭をワシャワシャと撫でながら涙を拭っていた。