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続・あなたの色に染められて

第10章 マタニティ・ライフ

♡June♡

『重っ!』

『ほらダンナさんしっかりして。』

璃子と同じ妊娠8ヶ月の体を体感しようとおもりを体に巻き付けられたオレ

『奥さんは毎日こんなに大変な思いをしてるんですよ。』

『マジか。』

『そうですよ。』

日頃から体は鍛えてるつもりの俺でもすぐに腰や背中に痛みが走るほどの重さに正直面食らった。

『すげぇな。』

こんなに重いのを毎日腹に抱えて仕事に家事にと奮闘するコイツに

『もう仕事やめろ。』

今月の末には休暇に入ることにはなっていたのだが おもりを外しながら改めて重みを実感するとそう言わざるを得なかった。

『何でそうなるの?』

『ダメダメこんな重い体で仕事して腹にいいわけがないだろ。』

見るのとやるのじゃ大違い。これじゃあんな小さい体にムチを打ってるようなもの。

『わかったか?』

首をブルブルと振り縦には振らない璃子と訪れていたのは病院が義務付けている両親学級。

妊婦がいかに大変なのかやお産が始まるまでの準備を助産師さんが同じ頃に生まれる親を前にして面白おかしく話してくれた。

『これじゃ心配で仕事にならねぇよ。』

『イヤだよ…』

ずっと傍に居たから璃子は寂しいとすぐに拗ねる。

『でも、来月から出張も増えるし 冷や酒の売り込みも始めるし… 腹立ってそんなにもうでかいんだぜ?』

実家にでも帰ってもらった方が俺も気が楽なんだけど

『ベビちゃん…パパ ママと一緒じゃイヤだって。』

最近は気に入らないことが起こるとすぐに腹の子に告げ口しやがる。

『そんなこと言ってねぇだろ。』

おもりを外し体は身軽になっても 俺だってすんなり首を縦に振るはずはなかった。

**

『ではみなさーん!次は沐浴体験です。』

次は助産師さんが順番に俺ら新米パパにレクチャーしてくれる本日のメインイベント。

『怖ぇな。』

リアルな重さに肌触りの赤ん坊の人形の後頭部に手を回し 親指の小指で小さな耳を塞いで

『これでいいのか?』

『そうそう森田さんは手が大きいから赤ちゃんも安心ね。』

野球以外で新たに活躍を期待された左手

プカプカと湯に身を任せる赤ちゃん人形にガーゼで体をなぞると 親になる実感を否応なしに植え付けられる。

『沐浴は京介さんのお仕事で決まりですね?』

『任せとけっ。』

すっかり調子に乗った俺に璃子も微笑んだ。

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