続・あなたの色に染められて
第11章 Hello! My Baby!!
『たくさん飲んだねぇ。』
退院した私は恵介を連れて里帰りしていた。
トントントン…
『あれぇ?』
体を起こしてゲップをさせようとするけど
『何で出ないのぉ…』
スリスリスリ…
何度も背を叩き撫でるけど
『恵くんまた吐いちゃうよ?』
いつもこれがうまくいかない。
ため息混じりにもう一度背を撫でていると
『ほれ、選手交替。』
お盆休み中で私の実家に泊まり込んでいる京介さんが私の腕から恵介を抱き上げ
トントントン…
『ゲッ…』
『うそぉ…』
『ナイス恵介。』
私と同じように背を叩いてたはずなのに秒刹でゲップを出す。
『恵介はパパが好きなんだよなぁ。』
大きな手で包み込むように抱き、恵介の額にキスをする姿は微笑ましくて私の心を暖かくするけど
『なんかズルい。』
家事は全く出来ないくせに 子育てのことになると何でもスイスイっとこなす京介さんに少し嫉妬をしてしまう。
『璃子?』
だからそんな優しい声して呼んだって私は素直に振り向けない。
『璃~子…』
『なんですか。』
睨み付けるように視線を上げれば
…チュッ
『え…あ…っ…』
私のことも恵介と同じようにあやす。
『拗ねないの。』
『拗ねてないもん。』
ママが買い物に行ってるこの時間
『もう一回していい?』
『恵介が見てるよ?』
『いいの。』
そんなわずかな時間で昼夜逆転しかかってる私の疲れた心をリセットしてくれる。
『京介さん…』
甘い甘い彼の冷たい唇に酔いしれ吐息を漏らしそうになると
『オギャー…オギャー…』
調子に乗るなと言わんばかりに息子に怒られてしまう私たち
『ごめんね、恵くん。』
なかなか泣き止まない恵介を京介さんの腕から抱き上げると
『なんでおまえだと泣き止むわけ?』
今度は京介さんが唇を尖らす。
『ママが好きなんだよねぇ。』
新米パパと新米ママは二人でちょうど一人前。
『なんか悔しいから恵介を抱いた璃子を俺は抱っこしてやる。』
『え…』
背後から包み込むように抱きしめられるとこれもまた私の心をあたたかくする。
『可愛いな。』
『可愛いね。』
『違うよ璃子がだよ。』
そう言って私を振り向かせまた唇を奪う。
『ただいまー!』
『やべっ!』
本当だ。みんな言ってた通り産まれると甘い時間は限られるんだ。