続・あなたの色に染められて
第12章 新しい生活
『もう…どうしたのぉ。』
真夜中の午前3時
実家に里帰り中の私は涙を流しながら訴えるように泣く恵介を胸に抱いて溜め息を漏らしていた。
『おむつも変えたし、おっぱいも飲んだでしょ?』
京介さんがお盆休みを終えお家に帰ったとたんに始まった夜泣きに私は毎晩付き合っていた。
『恵くん?』
かれこれ小一時間 立ってあやしたり寝かしてみたり…何をやっても唇を震わせて大きな声で泣いて
『泣きたいのはこっちの方だよ…』
私まで涙を溢してしまうと言うのがいつものパターンだった。
そんな時 こんな真夜中でも子育てのスペシャリストがリビングに顔を出す。
『ママー。』
『なんで璃子まで泣いてんのよ。』
ママは笑いながら私の頭を撫でると
『ハイ恵くん。バアバのところにおいで。』
ママは恵介を抱き上げると 涙を流す恵介に動じることもせず
『少しお外の風に当たろうか。』
と、玄関を出て真夜中の空気を吸いに出ていった。
『うそ…なんでよ。』
すると 不思議なものであんなに愚図っていた恵介はピタリと泣き止んでママの腕の中でスヤスヤと眠り出す。
『璃子も夜泣きするとなかなかご機嫌がなおらなくてね…こうやってお外に連れ出すとピタリと泣き止んだの。』
『私も?』
『そうよ。』
私によく似ていると恵介の目に溜まっていた涙を拭いながらとても優しい顔して微笑むママ
『毎晩うるさくてごめんね。』
『いいの。ママたちからしたら可愛い鳴き声よ。』
縁側に並んで座って9月のはじめの少しだけ涼しくなった風を感じて
『明日 美紀ちゃんたちが来たら子育ての手の抜きかたを聞いてごらんなさい。あなたは少し頑張りすぎてるから。』
『…そうかなぁ。』
正解がわからない子育てに翻弄されてる私。
ママが言うとおり頑張りすぎてるのかもしれないけど せっかく私たちの元に生まれてきてくれたのに手を抜いて育てる訳にはいかない。
『璃子は少し力が入りすぎてるのかもね。』
『そんなこと…』
すっかり自信をなくした私は俯き溜め息を漏らすと
『はいどうぞ。』
ママはスヤスヤと眠る恵介を私に抱かせた。
『京介くんと璃子の大切な子でしょ?あなたが出来る範囲で頑張りなさい。』
そう言って京介さんと同じように恵介を抱いている私ごとふわりと抱き締めてくれた。