続・あなたの色に染められて
第12章 新しい生活
『う~んっ!この香りこの香り。』
私の実家から家が近いこともあり、まーくんを連れて週1のペースで顔を出してくれる美紀
『そう?』
恵介を胸に抱くと赤ちゃん特有のミルクの香りに目を細め
『いいなぁ…雅也もこのぐらいの時に戻らないかなぁ。』
なんて、私の膝の上にチョコンと座ってお気に入りの絵本の中の動物を指差すまーくんに溜め息混じりに視線を移した。
『私は早く大きくなってほしいかも…』
夜泣きで困っている私には家で走り回って困っていると言うまーくんが羨ましいというのが本音…
『夜泣き酷いんだって?さっきお母さんから聞いた。』
夜中は怪獣のように泣き喚いているのに恵介は今借りてきた猫みたいに美紀の腕の中におさまって
『しょうがないのよ。泣くのが仕事なんだから。』
なんて 頬を緩ませながら恵介をあやしていた。
…泣くのが仕事
よくそんな台詞を聞いていたけど毎晩泣かれてしまうと心は萎えてしまう。
『雅也だってまだ夜泣きするよ?すぐに寝てくれるときもあるけど なにやってもダメなときがある。まだ上手に思いを伝えられないから泣くしかないのよ。』
わかってる。わかってるんだけど…
『きっと 京介さんに似て璃子に甘えてるのかもね。』
『京介さんに似てる?』
『そうよ。京介さんは璃子にだけ甘えるでしょ?だからその遺伝子をしっかりと受け継いでるってわけ。』
『そか…』
遺伝子レベルの話なら私に制御できるわけはない。
『来週にはお家に戻って子育て頑張るんでしょ?そんな顔してないでしっかりしなさい!』
さすが美紀!すぐにくよくよする弱い心を持つ私の背中をドーンと押してくれる。
『そうだよね…頑張る!』
そんな私を見ていた美紀はクスクスと笑い出し
『早く京介さんのところに戻りたいんでしょ?』
『…へっ?』
美紀は恵介の頬を撫でると
『ママの顔にパパに逢いたいって顔に書いてあるよねぇ?』
『そ…そんなこと!』
からかいながら私の赤らめた顔を覗き込む。
心を見透かされたようで恥ずかしいけどやっぱり彼と早く新しい生活をスタートさせたい。
『こりゃ早く二人目も出来ちゃうかなぁ。』
大切な人たちに囲まれた私たちはまたみんなに助けてもらいながら愛しい我が子を育てていく。
『もう…美紀!』
でも それが私たちらしいのかもしれないな。