続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『ただいま…』
リビングの灯りがドアの磨りガラスを通して玄関まで届いていた。
…起きてるのか?
もう時計は0時を過ぎたと言うのに
…カチャ
『お帰りなさい。』
おまえはいつだって柔らかな笑顔で俺を迎えてくれる。
『寝てていいって言ったろ?』
そんなことを言いながらも、ネクタイを緩めるのと同時に片手で璃子を抱き寄せて
…ちょっと充電
『お疲れ様でした。』
子供が寝静まってるのをいいことにこの甘いぬくもりについつい甘えてしまう。
俺の背中に回った華奢な手はまるで子供を落ち着かせるようにトントンと優しく撫でる。
日本酒ブームに乗っかったうちの蔵の酒。
通販を始めたのが思っている以上に当たってしまい 毎日兄貴たちと配送準備に追われていた。
…パンパン
『はい、お風呂入ってきてください。お夜食作っておきますから。』
本当は夜食じゃなくておまえを食いたいのに
『鮭茶漬けがいい。』
『わかりました。』
すげぇ抱きたいのに
『京介さん!お風呂ですよお風呂!』
『わかってるって。』
コイツは明日も早く起きて家事を済ませチビたちを保育園に送り届け蔵で海外担当として働く。
たぶん俺よりハードな毎日を送ってるのに 睡眠時間をこれ以上削るわけにはいかない。
『風呂一緒に入る?』
『入りません。』
俺は睡眠時間を削ってまでもおまえの柔肌に触れたい…なんて言えねぇな。
*
『どうぞ。』
『いただきます。もう寝ていいぞ。』
少しでも傍にいたいって思っちゃダメかな。
『いいの。』
隣の席に座って京介さんの肩に額を預ける。
…私の大好きな彼の匂い
『アイツら今日もいい子にしてた?』
『うん。陽菜が保育園で転んだぐらいかな。』
『転んだの?怪我は?』
転んだぐらいでそんなに驚かないでよ。
『かすり傷程度よ。』
『骨とか…』
『大丈夫です。』
子煩悩なのか過保護なのか…
『…コホッコホッ。』
『風邪?なんだよ…早く寝ろって。』
…早く寝ろか
いつからか「大丈夫?」が先にこないんだよね。
『ごめんね、それじゃおやすみなさい。』
『おぅ、おやすみ。』
キスして風邪がうつったら大変だもんね。
『あ~ぁ。』
…昔は私のことも心配してくれたのにな
なんて溜め息をつきながら2階へと続く階段を上った。