続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『さて、今日もひとり寂しく寝ますかね。』
陽菜が産まれて前のマンションが手狭になり 実家の酒蔵の近くに家をたてた。
広い庭のついた4LDK。
そのお陰で当たり前だけど部屋は増え 帰りの遅い俺だけがベッドだけ置かれているこの殺風景な部屋で寝起きする。
まぁ、璃子を抱くときにに子供たちの目を気にしなくてすむから重宝はしてるけど
『抱きゃ、一発で疲れなんか吹っ飛ぶんだけどなぁ。』
幸せの代償とはいえ1人はやっぱりつまらねぇ。なんて思いながら毎日を繰り返していた。
*
『パパ~起きてくだしゃい。』
この舌っ足らずな声の主は
『お仕事でちゅよ?』
可愛い可愛いプリンセス
『陽菜 おはよう。』
『おはようございます。』
『今日も髪の毛可愛いな。』
『ママにやってもらいまちた。』
コイツはどういうわけだか俺に対して敬語を使う。
いまだに敬語を使う璃子を小さくしたって感じ。
『いただきまーす!』
『お父さん、日曜日野球行ける?』
『そうだな…午後からなら行けるかもな。』
『陽菜も行きたいでしゅ。』
子供たちとは最近朝しか会っていない。
…コホッコホッ
『無理して仕事来なくてもいいからな。』
璃子は昨晩よりも渇いた咳のせいなのかキッチンでマスクをしてる。
『大丈夫ですよ。』
頑張り屋のアイツだから拗らせなきゃいいけど
『じゃ、今日はオレがコイツら送ってくよ。恵介、陽菜さっさと支度しろ~!』
俺に出来ることなんてこのぐらい
『ありがとう…すみません。』
『早く治せよ。』
ポンと小さな頭に手を置いて丸い額にくちづける。
今日もまたお預けだな…
『ほら行くぞー!靴履けー!』
『いってきまーす!』
『いってらっしゃい。それじゃ、京介さんお願いします。』
手を振り大好きな3つの背中を見送る。
『はぁ…』
…私どうしちゃったんだろ。
キッチンに掛かっているカレンダーの前に立つ
もう1ヶ月近くも抱いてもらってないんだ
…コホッコホッ
おまけに咳までしてるし
パパとしては100点満点なんだけどな…
彼と出会って10年以上
…浮気してるのかな
それとも私に魅力がなくなったのかな
『はぁ…』
食器を洗いながら溜め息をつく私
『いけない!今日は朝から会議だったんだ!』
彼の待つ職場へと急いだ。